2012年06月19日

習作:鯉精(1)


 雨のそぼ降る、水無月の夕暮れであった。

 大川へ掛かる橋には人気もなく、

 急ぎ足で西へと渡っていた男は、眼前へ立ち止まる何者かの気配を認めてふ、と足を留めた。
 差し掛けた傘の内から、色濃く濡れた小袖の裾が見えている。

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posted by 水風抱月 at 03:26 | Comment(0) | TrackBack(0) | 未熟なる破片 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年06月18日

習作:花の乙女と騎士の弓

真黒の森の奥深く
打ち棄てられた銀の弓
王なる塔を護るが如く
月のきらめき携えて

放てばひかりは塔の内
黒の茨を照らし出す
楔の如き戒めは
王の命の盾として

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posted by 水風抱月 at 21:34 | Comment(0) | TrackBack(0) | 未熟なる破片 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年02月23日

002:隣(水風抱月)

凍てゆるむ夜風へ梅香揺らし居り冷たきひとの隣家にも春


posted by 水風抱月 at 00:29 | Comment(0) | TrackBack(0) | 暁闇の泡(題詠blog '12) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年02月05日

001:今(水風抱月)

白金に耀ふ月は今昔の感無き儘に願掛けられて


posted by 水風抱月 at 01:07 | Comment(0) | TrackBack(0) | 暁闇の泡(題詠blog '12) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年02月01日

題詠blog2012へと参加させて頂きます。(水風抱月)

 今年もまた、懲りずに参加させて頂きます。

 短歌感想はともあれ、完走を目指して。

 どうぞよろしくお願いいたします。


posted by 水風抱月 at 13:13 | Comment(0) | TrackBack(0) | 暁闇の泡(題詠blog '12) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年10月10日

習作:冷たい四十雀へ

その世界は、とても素晴らしかった。
青々と茂る草木。
遠く広がる空は、どこまでも続いているように見え
そして何より、目に映る何もかもがきらきらと輝いているように見えたのだ。

あまりの美しさに、彼はその先へ進むのを躊躇った。
これは、幻ではないだろうか?

振り返り掛けた、その時だった。
茂みの向こうで動く影を、彼は見つけた。
その影は、自分と同じ姿をしていた。
同族だ。
ならば、この先は安全だ。

彼は羽ばたいた。
力強く。

一息の間に、その世界が迫る。
一息の間に――

希望に充ち満ちた瞳が眼前に迫り、見開かれ

世界は 真っ白に砕け散った。

彼は墜落した。


仰向けに倒れ、意識を失いゆく彼の瞳に映ったのは
煤けた角材の屋根だった。

新たな世界と見えたのは、磨き抜かれた硝子窓だったのだ。


冷たい秋の風が、動かない彼の熱を奪ってゆく。

青空へ向けられた小さな瞳は、いつまでも見開かれたままだった。


補足
posted by 水風抱月 at 01:08 | Comment(0) | TrackBack(0) | 未熟なる破片 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年09月02日

005:姿(題詠blog2011 鑑賞)

 題詠blog2011に投稿されたお歌の中から、好きな歌を少しずつ書き留めておきます。

 「005:姿(TB1〜243)」の中から、いくつか。
 ※お名前は敬称略となります。どうか御容赦ください。



tafots(許せないなら許さなくていい)
美しい姿勢で赤子をあやす君 むかし地上を見下ろしていた


草間環(前略草々)
真夜中に父の寝姿確かめてね息がきこえ安堵している


行方祐美(2011年 百首題詠のために   行方祐美)
Gパターン放せよと背すぢなぞられてわれは姿勢をひらいてゆくも


紫苑(紫苑がさね)
姿見にかかる端布(はぎれは佳き日々の名残か祖母は百歳(ももとせ)を生く


山田美弥(miyabox)
10秒間姿を消した 苦しみがとぎれとぎれに続くようにと


あひる(あひるの空)
朝な夕な庭のみかんを啄める鵯の姿まあるくなりぬ


夏樹かのこ(鹿の子帳)
祖母の手を幾度も撫でる母の手に母娘の姿垣間見ていた


みち。(銀塩プロローグ。)
吐き出した嘘が纏わりついてきて最初の姿を思い出せない


北爪沙苗(題詠blog)
なんといふ通過駅だかおそろしくすすけてゐたる後ろ姿は


野坂らいち(のーずのーず)
僕だけに見せたくないという姿 眺めて生きたい「結婚しよう」


補足的、ぽつり。
posted by 水風抱月 at 00:15 | Comment(0) | TrackBack(0) | 短歌鑑賞(題詠blog '11) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年08月31日

004:まさか(題詠blog2011 鑑賞)

 題詠blog2011に投稿されたお歌の中から、好きな歌を少しずつ書き留めておきます。

 「004:まさか(TB1〜257)」の中から、いくつか。
 ※お名前は敬称略となります。どうか御容赦ください。




紗都子(羽うさぎの日記帳)
あまさから苦さへ至る道すじを君におしえるカラメルソース


まるちゃん2323(まるちゃん2323のブログ)
夕空に君の面影溶けてゆくまさかの刻は漆黒の闇


あひる(あひるの空)
冬枯れの狭庭見やればたまさかに雪柳一輪咲くを認めむ


南野耕平(ボクといっしょに走りま専科)
その声がまさか自分の声だとは気付かないまま行き過ぎたのだ


たえなかすず(Strawberry Fields Forever)
非常口手すりに脱いだTシャツとあの夏の日がまさか愛とは


浅見塔子(衛星ドロップ)
雨落ちる土が溶けゆく過程にてまさか君の死を恐れるとは


小夜こなた(小夜こなた)
「想定外」「まさか」と呟く人間の奢りを哄う震災の痕


歌音(つむぐ)
ああ風だ あなたは花を抱いたままさか道くだるつむぐ音して


滝音(みそひともじの味噌スープ)
「まさか」って軽い言葉で消えないか友の訃報にぬれじゃくる夜


補足的、ぽつり。
posted by 水風抱月 at 01:30 | Comment(0) | TrackBack(0) | 短歌鑑賞(題詠blog '11) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年08月26日

003:細(題詠blog2011 鑑賞)

 題詠blog2011に投稿されたお歌の中から、好きな歌を少しずつ書き留めておきます。

 「003:細(TB1〜266)」の中から、いくつか。
 ※お名前は敬称略となります。どうか御容赦ください。




西巻真(ダストテイル−短歌と散文のブログ−)
細雨降り止まぬゆふがたあなたからわたしにとどく一本の針


富田林薫(カツオくんは永遠の小学生。)
昭和史をほどいてみれば群青のひかりのような飴細工あり


藍澄さねよし(ヨシナシノート。)
細菌のごとくひしめく人々も吾もレンズの底に居るなり


星川郁乃(Air Station)
ゆるぎない強くて細い線を引きたい定規など捨てたとしても


飯田彩乃(陸を離れる)
こんなにも細くて頼りないからだで降ること決意したのね 雨は


嵐家 昇(短歌という糸)
やせ細った父の体温抱きしめて凧は飛んでく鈍色のそら


勺 禰子 しゃく・ねこ(ディープ大阪・ディープ奈良・ディープ和歌山)
細くない縁(えにし)と思ふ山麓のゆふやけが闇に変はりゆくとき


補足的、ぽつり。
posted by 水風抱月 at 01:51 | Comment(0) | TrackBack(0) | 短歌鑑賞(題詠blog '11) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年07月10日

002:幸(題詠blog2011 鑑賞)

 題詠blog2011に投稿されたお歌の中から、好きな歌を少しずつ書き留めておきます。

 「002:幸(TB1〜259)」の中から、いくつか。
 ※お名前は敬称略となります。どうか御容赦ください。




富田林薫(カツオくんは永遠の小学生。)
とおく種であったころの幸せを砂丘のすみから植えてゆきます


なゆら(リッスン・トゥ・ハー)
幸せというたらおっちゃんあつあつの蛸焼きほふほふいわしとるとき


那緒(うさぎぱん)
幸せと不幸せとの間には国境があり旅券を求む


猫丘ひこ乃(ふりつむ☆ぷりずむ別館)
数珠念珠下げた牛歩の老女おり祈りつつゆく幸多かれと


内田かおり(深い海から)
道のべに踏まれずにある蕾みあらば畳み込まれておりしか幸は


雑食(題未定)
左手の薬指から幸せの跡消えるころあなたに逢いに


清次郎(Conical flask)
「おてがるなやつはだめね」と幸せをワインのように笑う 泣きなよ


三沢左右(Lazy Room)
僕だけの明日をあなたの幸せに染め変えてゆく白い好日


牧童(牧童の夏至)
地に落ちた椿の上の車いす幸を見たのか老婆微笑む


補足的、ぽつり。
posted by 水風抱月 at 23:57 | Comment(0) | TrackBack(0) | 短歌鑑賞(題詠blog '11) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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