2006年12月29日

双子座迷宮 〜AFTER

 ふと思い出して、久しぶりに彼らの住んでいた街を訪れてみた。

 もう、10年ぶりになるだろうか。
 暫く来ない内に、街は大分様変わりしていた。
 地面そのままだった往来には敷石が並べられ、更には粗末ながら街灯まで整備されている。
 行き交う人々は相変わらず荒み、飢えた獣のようにギラギラとした目つきをしていたが、それでも身につけているものは過去のそれらよりも遥かに色鮮やかなもの。
 土壁や木造が主だった街の家々は、煉瓦造りのものが主となっている。
 彼らが栖としていたボロ屋も、やはり跡形もなく消え失せていた。

 仕方もなしに当て処もなく彷徨っていると、酒場や道具屋、雑貨屋の建ち並ぶ繁華街の片隅に『暴竜亭』と乱雑に書かれた看板があるのを見つけた。
 真昼だと言うのに、どうやら客が入っているらしい。

 ぎしぎしと軋む扉を開けると、むっとする酒の臭いが鼻を突く。
 迎えの言葉もないままに薄暗い店内を見渡せば、鋭い視線が突き刺し返してくる。

 カウンターの奥には、濁った薄赤い髪をぐしゃりとまとめた、目付きの鋭い…
 鋭すぎる、引き絞った体躯をした中年の女。
 どこかで見たことがあるような気がして、目を凝らす。

 ――と。

「入口でボサっと突っ立ってンじゃないよ、このウスノロ!」

 容赦のない罵声。
 さすがに些か衰えているものの、紛いようのない声と、相変わらずの口調。


 女のかつての名を、ジャミイと言った。
posted by 水風抱月 at 01:43 | Comment(0) | TrackBack(0) | 未熟なる破片 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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