2012年06月18日

習作:花の乙女と騎士の弓

真黒の森の奥深く
打ち棄てられた銀の弓
王なる塔を護るが如く
月のきらめき携えて

放てばひかりは塔の内
黒の茨を照らし出す
楔の如き戒めは
王の命の盾として

蕾が開けば頽れる
脆くも儚き影の花
空さえ識らぬ蕾は白く
弓のひかりを弾いたが

朝に夕なに訪れて
茨が愛撫で満ちるたび

王なる塔は厳かに告げた
「弓よ 弓よ 弓張月よ
 その花が咲き、枯れるとき
 おまえも 花も
 わたしと共に朽ちるのだぞ」

それでも弓は光を放ち
茨は愛撫を受け入れた

月の如くに開いた蕾は
星の如くに砕け散る
王なる塔の哄笑は
何処か哀しく果ててゆく

「弓張月よ 花は識るまい
 ひかりのもたらすその意味を」


無慈悲で優しき夜の王
弓へは戒めの花蔓
朽ちることもなく枯れもせず
縛する花に弓は笑った
「月のひかりを覚えているかい」

冷たい聲で花は応えた
「君を知らない」

弓は尚も語りかける
「月のひかりを覚えているかい」

冷たい聲で花は応えた
「知らない」

それでも花は動けず 動かず
やがては共在る時を受け入れる


闇夜の森の奥深く
いまもなお、

花の乙女と騎士はねむる




補足:
とあるお話に着想を得ております。
posted by 水風抱月 at 21:34 | Comment(0) | TrackBack(0) | 未熟なる破片 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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