2011年10月10日

習作:冷たい四十雀へ

その世界は、とても素晴らしかった。
青々と茂る草木。
遠く広がる空は、どこまでも続いているように見え
そして何より、目に映る何もかもがきらきらと輝いているように見えたのだ。

あまりの美しさに、彼はその先へ進むのを躊躇った。
これは、幻ではないだろうか?

振り返り掛けた、その時だった。
茂みの向こうで動く影を、彼は見つけた。
その影は、自分と同じ姿をしていた。
同族だ。
ならば、この先は安全だ。

彼は羽ばたいた。
力強く。

一息の間に、その世界が迫る。
一息の間に――

希望に充ち満ちた瞳が眼前に迫り、見開かれ

世界は 真っ白に砕け散った。

彼は墜落した。


仰向けに倒れ、意識を失いゆく彼の瞳に映ったのは
煤けた角材の屋根だった。

新たな世界と見えたのは、磨き抜かれた硝子窓だったのだ。


冷たい秋の風が、動かない彼の熱を奪ってゆく。

青空へ向けられた小さな瞳は、いつまでも見開かれたままだった。


補足
posted by 水風抱月 at 01:08 | Comment(0) | TrackBack(0) | 未熟なる破片 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。